河 あの裏切りが重く
(C)ATG
戦争が終ってからすでに二十年の歳月が流れていた。一人の男と女が、原爆の落された広島に友人を訪ねた。二人はそこで、被爆後行方不明になったその友人の兄が、実は生きているのではないかという手紙に接し、差出人を探しはじめた。真夏の陽光の下に、広島はけだるい雰囲気につつまれていたが、この街にある奇妙な形をした相生橋、太田川べりの被爆者集落を見、被爆者の話を聞いた二人は時間を逆行して、あたかも二十年前に辿りついたような錯覚に陥った。他人の視線に屈辱を感じながら入院させて貰うために病状の悪化を願う青年、被爆直後にまだ息のある人を助けてその肉親から謝礼を取っていたという男、ケロイドはなくなったが、いつか再発すると信じている少女、それらの人々は二人に、二十年の歳月が無意味に過ぎていたことを知らせた。